碧落
散歩を誘う小路があった
五月雨が通りすぎて
花の匂いを消していく
ひとひら散り、またひとひら、すでに葉になりつつあり
ひとつだけ残ったつぼみ。
どうやらこのつぼみまでは開くらしい。私は
かなわないと知っているおもいを何度も取り出して、開いて、触って、
かなわないと知っているおもいほど快楽。
黙っていた。
かたときも離れず一緒にいなければ死んでしまう
というふたりにしか行けない場所が
確実にあるように
そんな時間があるように
それはとても思ってしまう。
私もそこに
ゆけたかもしれなかったその場所を
ふたりは今日も散歩していて
そこにはあたたかな雨が降り
日常の後ろに音楽が流れ
それらを丁寧にかさねてゆく。
それは友情でも恋人でも夫婦でも呼び方はなんでもかまわない。
私は大事な人と離れてはいけなかったのではなかったか。
花ではなく
歌ではなく
ずっと信じられるその言葉より
選んだ言葉が声になった。
書:坂本パルコ