脂肪告知
今日、ヒョロリが死んだ
何度も何度も真っ直ぐに泳ごうとして
何度も何度もそれを私に見せようとして
大切なことはいつも、いつだって覚えていないというものなのではないでしょうか
余計なことばかり覚えている
ソファから見えるテレヴィの位置とか
アイスクリームが溶け切って皿の上に小さなプールを作っていたこととか
左の踵ばかりに靴擦れをつくってしまうこととか
煎った胡桃とか
今だ
今、この瞬間に必要なのは音楽で云う転調
音楽家でない者には転調することが出来ない
ただ、死亡告知という文字だけが
脂肪告知と誤って変換されたまま
モニタの画面で発光していた
不可能を苦々しく思う
ヒョロリの亡骸を見下ろす
書:坂本パルコ