鍋とペンペン草
空き地の真ん中に、雪平鍋がおいてある。
内側が黒く、焦げついているようだ。
捨てられてしまったのだろうか。
今日は春のよい天気で、そんな鍋にも陽がさしている。
雨が降った日、まだ鍋がある。
すこしの水を湛えて、むかしを思いだしているのかもしれない。
空き地の真ん中、鍋はひとりで水を湛えている。
さあ、春といえばペンペン草だ。
鍋のまわりにたくさんのペンペン草が生えた。
ペンペン草はついつい風にそよいでいるが、
傍らで鍋は、まだじっとしている。
書:武田地球