.feat GT 篇

休載のお知らせ(ごおとうたいわん)

8月の21日まで休載しますので何卒よしなに
休載をすると代わりに旅行記が載るというなんとも不思議な頁


台湾旅行のプランを練ろうと
ちきゅうさんとタイ料理でドリップコーヒーを飲む。

まあ、プランと言っても話す前から既に内容は決まったようなもので

食べる
エステ
占い

という私たちとしてあるべき 「真っ当な」
休日をふたりで 「エンジョイ」 することにする。
ついでに私は

とてつもなくおいしい月餅を絶対に、どうしても買いたい!

ということを主張、いかに私と私の家族が月餅を好きか
(というほど家族は好きではないのかもしれない。
私は大好きだ、月餅を。好きなのだ、月餅を。
と倒置法で言ってみるくらい好きなのだけれどとはいえ
それほど頻繁に食べるものでもない、月餅は。
ということはそれほど好きではないのかもしれない月餅。
でもそんなことはもうこの際どうでもよいのだった。
お土産ってそういうものなのではないかと思うんです
敬具)

について不必要に熱く語り、そして賛同を得ることの出来ないまま
ちきゅうさんが残した抹茶アイスの底のコーンフレーク
をひと舐めして
書店をうろうろしては
私がタイ料理屋で落とした指輪をふたりで取りに戻り
ビニール袋に入れられた指輪を受け取り
はたまたスーパーの並びにある粉っぽいおいしいソフトクリームを食べてこの一日の夜は終わったのでした。
(つづく)

書:坂本パルコ

台湾その後に

そんな訳で台湾詩人ふたり旅。
行きの飛行機で隣に坐ったカップルは熟年のゲイだった。
何だか幸先のよい旅のはじまりに
というか、どうしてそれを確信したかというと
お魚と牛肉の2種類あった機内食、
お魚の方をチョイスした彼(男役だと思う)が

ねえねえ〜、やっぱり牛肉の方がいい〜

と言い出し取り替えてあげたもう一人の彼(ということは女役)が

取り替えてあげるのは愛してるからなんだゾ!

と普通に話していたからでこれがただの男友達だったとしたら
今までの私の人生は全て間違っているのではないか
というのは大げさにしてもとにかく
そんなふたりの会話を聞いていたのは私ひとり、
隣でちきゅうさんはホビットを観ていたし、
私は3時間キリンジとサンボマスターを交互に聞いた。

今回はパッケージツアーに乗ったので
空港からホテルまでの送迎もあり、その時
知っていると便利な中国語メモのようなものを渡され
しげしげと眺めていたちきゅうさんが

単語集の中に「古だぬき」
っていうのがあるけど ・・・ これいつ使う ・・・?

と言い出し私たちふたりは笑いが止まらなくなり
更によくよく見ると

岡惚れ

という単語まであり、

一体現地の人とどのような会話をしろというのだ??

ということでホテル着。
(以下次号)

書:坂本パルコ

ハワイ案#02

今年のハワイ案は可決されました

書:坂本パルコ

夏の夕暮れ

公園の散歩をするのが夕暮れ
水の音がしたり
風が吹いたりしている
雲にオレンジ色がついて
白い月があがって行くのを見たりする
手はすこし汗ばむ
アイスクリームの自動販売機
一つ180円から220円
seventeen ice cream
小銭をポケットからだしたりする
丘に登る
遠くが見える
蝉がまだうるさい
どうしようもない
ただの散歩というもの

書:武田地球 feat.mashimaru GT

寸劇

タイを出国するのには
ゲートを通る必要がある
西に黄色のゲート
東には赤いゲート
どちらも狭い狭いゲートだ、
というのは正確ではない。そう
東にもゲートがあったのだ
わたしたちは驚きは隠さずに
ウインカーを折りたたむと
天使が舞い
ラッパの音がして
ゲートは開かれた
すれ違う人が通るそれは
なぜだかとても広く感じた
恭子は橙のワンピイスを肩に通そうとして
タイの中によく冷えた仏教を見出す。

書:坂本パルコ

ゴーヤ

悪いことをした
だから今年は
庭のゴーヤがならなかった
それでも生真面目に
幾つも花が咲いた
やっぱりわたしはゴーヤがすきだ
忘れてはならない
そんな苦いことばかりだ
ありがとうというと
あの夏が小さくなった
けれど終わることがない
西陽はずっと眩しい

書:武田地球

あのときのゴーヤ

ゴーヤ

ゴーヤチャンプルが食べたい、
ふとそう思った。
夏だなあ。
見た目はいつも通り
ぽわーっとしていますが
会心の出来。
理由は花かつおを使ったことと
いつもの2倍位の厚さの
豚バラを使ったことだ(多分)。
肉の脂が好きなので
豚バラと
豚肩ロースが大好き。
ゴーヤの苦味は塩と砂糖で揉んで抜く。
下処理もせずに初めて食べたその苦さときたら。
あの時のゴーヤは苦かった。
あんまりの苦さにその時のことは
自分が着ていたものすら覚えているくらいだ。
その時のびっくり仰天の気持ち、
きっと一生忘れないのだろうと思う。
最近のゴーヤは苦くなくて、少し寂しいと思う。

written by parco sakamoto

8月21日

食事
か 読書
か コーヒー
か スケボー
か ウォーキング
か 大谷翔平

と聞かれたら多分
大谷翔平だけど
大谷翔平
か 昨日

と聞かれたら
断然昨日だ

書:坂本パルコ

favorit

暗い、バリの部屋では時が刻まれいつまでも
続くようでもあり続くようでもなし私達はそれを
或る文字として認識するようです
西も東もないような夕暮れに
弓なりの空の下を矢のように急かされる
急かされる? いいえ、
気づいたものがありました。
歩調はたそがれ
青く色染めた手首のバンド

書:坂本パルコ

バニラアイスクリームとバナナケーキ
プラスティックのスプーンを添えて。

百物語 坂本パルコ編

ざざざ
波の音がする
待って
小豆かもしれない
大笑いする
小豆笑い
天国に南はあるだろうか
滑り落ちた波風は
その温かさでロオソクの火をくらあく
引き伸ばした

書:坂本パルコ

電信柱

電信柱は垂直にしている
誰にもほめられず
見向きもされず
せめて綺麗だったらいいのに
なんとも言えない色をして
笑うこともない
だからあの人はまるで電信柱だ

電信柱がすきだ
それでも勇ましいから
まちがったことをしない
煩いことを言わない
かといって冷たくもない
夜に必ず
ありふれた光を灯す

忘れてはいけないことがある
わたしは街中の電信柱に
なまえを書いて廻った

書:武田地球

恋人の骨

恋人の骨

数年前に恋人が死んだ。
自宅にも少しだけ骨を置いておきたかった。だからそうした。

ところが骨の保管というものは難しいそうで、手元供養の小さな骨壺の中で骨は
もう黴が生えているかもしれない。
死んだあとにもそんな事が待っているものだから、いのちとは難儀なものですね。

そんなことをぼんやり考えていたら、今日はお盆だった。
身内の墓参りの算段はしても他人の盆などすっかり忘れるものだと、思わず笑ってしまう。
それでもあの頃のわたしの、わたしの殆どすべて。

とにかく我の強い人だった。
きっとお盆に思い出さないわたしに腹をたてて、向こうからやってきたのだろう。
最期に会った時は車椅子に乗っていたはずなのに、迎えのナスもキュウリも来ないから怒って、「あんたはなにしてんのや」と必死に歩いて来たような気がする。
思いだすことも減ったのに、やたら鮮明に目の前にあらわれてしまう。愛というものは、死ぬこともできず厄介だ。

好きだった梨を剥いて、線香を焚いた。
あの人が捨てたはずの、それでも故郷の街、大阪の寺で買ったビャクダンの線香がわたしにも優しい香りを届ける。

もう殆ど忘れてしまった。
けれどこの家にはあの人の遺骨があって、遺影がある。遺骨にはもう黴が生えているかもしれない。
それでもまだあって、それからジッポのライターもある。

written by chiQ takeda

百日紅の花

今ちょうど百日紅の花が咲いた
叔父が亡くなった時にも
百日紅の花が咲いていて
その叔父とはほとんど行き来がなかったため
死んだと聞かされても何の感情も湧かなくて
悲しみとか
怒りとか
安堵とか
慶びとか
私にとって彼はただのいなくなってしまった人
なのだがそれでも毎年この白い花
を見るとアア、そういうこともあった、と思う。
歳を取って死んだら私のことも誰かが
思い出してくれるだろうか。

書:坂本パルコ

あかい電話ボックス

傘を差すより濡れる
灯りをつけるより暗くする
わたしにはそういう日もある

誰もいない電話ボックスで暮らしたい
いつでも話せる気がするから
むかし暑い夏の終わりの日
駅の傍のあかい電話ボックス
踏切の音がきこえるね
あの声は誰かに届いていたのか

書:武田地球

オゾン層はそれでもオボン層の夢をみるか

オゾン層をふざけてみればすなわちオボン層となり
それはお盆荘にもつながり
一見夏季に祖先の霊を祀る神樂のような趣さえ帯びてしまうのであるが
オボン層もオボンソウなどという片仮名に押し込めてしまえば
オボンソウはオボンバナに進化する外
この鬱屈した状況を打破する術がなかった。
オボン層はおぼんで
重いんです。食事のっけてるんだから。
最近じゃあ、犬も相手してくれない。
これ、フリスビーじゃないじゃない。ただのおぼんですよ。
そりゃあ、湯のみも冷めるわけだ。マホー瓶じゃないんじゃ。
フリスビーにも湯のみは乗りました。
根拠はね、ないんですよ。層があるなんて知らなかったんですから。
おぼんにするには、不安定で。
何度も往復しました。面積が狭すぎたんです。
スケッチボードにするべきでした。芸術のお盆。しゅっぱつ。
出発致します。バスが。さよーなら。お気をつけて。
バスは行ってしまいました。別れの紙テープも千切れて。ああ。
仕方ないからSUVに乗ります。Suicaは? あ、お釣りは結構です。

書:眞島まる

八月の小さな冗談と真夏の恋病
天気のせい、それは暑さのせい

金木犀

角を曲がると
秋に迷い込んだ 
橙の花の合図
さっきより高い空
思わず葉書を一枚書く

郵便屋の男が
忘れずに届けますと云う
きのうより気温が下がった
花の香りが一度だけした
郵便屋の自転車は走り続けて
今日は寄るべがない

書:武田地球

消えない移り香

落ち葉の日々
風の匂いに
つい振り返ってしまう
匂いは、形ではない
匂いは、閉じ込めることが出来ない
閉じ込めたつもりでいると、途端に
指のあいだから逃れていく
匂いは、記憶に語りかける
私は振り向かない
聞こえない言葉は愛ではない
聞こえないというよりも寧ろ
聞こうとしない
橙としかいいようのない匂いが
手の中に残っていた

書:坂本パルコ

アニョーパスカル

ひつじ型のお菓子は
アニョーパスカルといって
復活祭の時に焼かれる
一つ焼くには卵を三つ使う

しろい粉砂糖をかける
すこし幸せになりたいわたしは
かわいいひつじをフォークで刺す

人に生まれてよかった
こんなことをしながら
それでも
あなたの幸せを願う

アニョー型は
焼き物の街スフレンハイムで作られた
キリストは甦り
それ以外もきっと甦る

書:武田地球

或る日#02

ピザの受け渡しは
丁寧に応対する
わたしたち
右折ができない路を
その街のせいにする
わたしたち
ひいては
気遣う
こころ
ところ

わたしたち
わたし
たち

書:坂本パルコ

金木犀みつけた

too sweet

男ナシには一晩も、過ごせないんです
闇に紛れた月
濡れた金木犀の匂い

書:坂本パルコ

坂本。

坂本。

大学生の頃、わたしは劇団に所属していて、そこには坂本という先輩がいた。
坂本は先輩なのにみんなに坂本と呼ばれていた。
わたしが劇団を引退する年に、坂本が手紙をくれた。それから自作のうたを歌ったカセットテープも一緒にくれた。
手紙は鉛筆書きだった。やたらと熱い坂本とわたしのことがA4の紙いっぱいに書いてあった。
坂本。
みんなちょっと坂本をバカにしてた。わたしも坂本って呼んでいた。
それでも「〇〇と話すときは楽しかったよ」と書いてあった。
カセットテープはもう聞けない。
けれどカセットテープもそれから手紙も、捨てないでしまってある。

written by chiQ takeda

ジョーダンキツいぜ去年のパンツ

一年でゴムは弛むものです
一歩間違えばアホになる、
というよりアホになりきった
まるで弛んだパンツのゴム
のような生活を続けているのですが
渡らなくてよい沢を渡り
登らなくてよい山に登り
引掻けなくてよいゴムに
引掻けろ。
パツンっ
幾年振りのパンツ。
蜜柑と黄桃とバナナ、牛乳を混ぜてミックスジュース、パンツ。
パイナップルジュースと牛乳を混ぜてハーフ・アンド・ハーフ。
パンツ。クレーム・ド・ブリュレ添え。
セックスは手際よく。
パンツは歯切れよく。

書:坂本パンツ

あんパンを食べたから

高台からは遠くが見える
あんパンが好きなことを思いだして
パン屋に行ってあんパンを買った

わからない日がある
なぜここに立っていないとならないのか
夏の終わりには
ちゃんと秋があって
空は高くなったりする
わたしはせめて
誰かを想って祈ったりする

後ろを振り返る
長い道があって
まちがいは無かった
あんパンを食べた
だから歩いて家に帰る

書:武田地球

夏は終わり、溢れる光
やさしく波打つこの気持ち

春秋蜜柑

発行日:2021年5月8日
毎週土曜日更新

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